アーキアの遺伝情報伝達に関わるRNA関連酵素を分子レベルで解き明かすことを目指す平田研究室のみなさん。
最近では有用微生物も徳島県内で探索中のこと。
理工学部 准教授 平田 章(ひらた あきら)研究室
高温環境で生息する超好熱菌を通して、生命の起源や進化を解明する手がかりを掴もうと研究に取り組む平田先生。「生物は真正細菌とアーキア?真核生物の3つに分岐して進化しています。アーキアとヒトをはじめとする真核生物は同じ祖先から分岐したため、遺伝情報伝達に関わる仕組が似ています。また、アーキアを研究することで生命の起源や原始地球の高温環境下で生物がどのように進化してきたのかが分かるのではないかと考えています」。
アーキアにもいろいろな種類がありますが、実験に用いるのは原始生命体に近いと推測される超好熱アーキア。「世の中にある形のあるものは、何かの働きをするためにその形状になっている。その逆も真なり」という構造生物学の理論のもと、目に見えない分子の形を可視化し、その分子の機能と役割を探ります。
解析には生化学解析と構造生物学解析、遺伝学解析の3つの手法を用います。中でも平田先生が得意とするのは、構造を解く構造生物学解析。遺伝情報の伝達に関わるタンパク質の反応メカニズムや関与するアミノ酸残基を分子構造で見て分かるようになり、関係性をイメージできるようになりました。
平田先生が学部生の頃は酵素活性を数値化するしか変化を知ることができず、「何が起きているのか、構造を見てみたい!」という強い思いで研究を続け、現在のような立体構造解析へとたどり着いたといいます。2008年と2014年にはRNAポリメラーゼ(RNAP)という遺伝情報のDNAをRNAに変換する酵素の構造を初めて決定し、2種類のアーキアRNAP自体がどのような形でRNAを合成するのか、他の仕組みとあわせて学術雑誌『Nature』と『Nature Communications』で紹介されました。
超好熱アーキアThermococcus kodakarensis RNAポリメラーゼのX線結晶構造。10年の歳月を経て決定。
実験に用いるのは鹿児島県の小宝島の海 底火山の噴出孔で単離された超好熱アーキア 「Thermococcus kodakarensis」。
超好熱菌研究ではメジャーなアーキアだそうです。
現在、AI、X線結晶構造およびクライオ電子顕微鏡単粒子解析といった新しい技術により、立体構造解析を用いた研究が進んでいます。実験のため、学生も大型放射光施設『SPring-8』へ行くことができます。「自分のサンプルは責任持って自分で測定する。実験で自分が見つけた結果を学会で発表して、いろんな人とシェアして、シェアできたことに喜びを感じてもらいたい。その楽しさや喜びに行き着くためには、実験を完遂する忍耐力も必要です。学生時代の研究を自身の研鑽にも役立ててほしい」という平田先生。
2020年、徳島大学への着任をきっかけに地元の高校生も交え、徳島ならではの急傾斜地農法に関わる新たな微生物探索も始まっているので、興味のある人はぜひ研究室を訪ねてみてください。
『SPring-8』でクライオ電子顕微鏡単粒子解析のため、凍結グリッド作製。この工程が肝心だそうです。
研究室のサイトにはイエローストーン国立公園のモーニング?グローリー?プールの写真が。
ここは好熱菌の研究者にとって聖地のような場所で、平田先生自身も訪れたことがあるそう。
https://wwp.ait.tokushima-u.ac.jp/lifescience/