疯狂体育,疯狂体育app下载5年度 若手研究者学長表彰 疯狂体育,疯狂体育app下载報告
報告者
大学院医歯薬学研究部医学域栄養科学部門医科栄養学系実践栄養学分野 講師 中本真理子
大学院医歯薬学研究部実践栄養学分野 教授 酒井徹
大学院医歯薬学研究部実践栄養学分野 助教 中本晶子
国立長寿医療研究センター?老化疫学研究部 部長 大塚礼
- Nakamoto M, Nagashima T, Tanaka Y, Ono S, Iwasaki Y, Nakamoto A, Zhang S, Kinoshita K, Furuya K, Imai T, Otsuka R, Sakai T. Validation of a dietary balance score in middle-aged and older community-dwelling Japanese. J Med Invest. 2023;70(3.4):377-387. doi: 10.2152/jmi.70.377.
- Nakamoto M, Kanmura M, Yoshida M, Yamada K, Nakamoto A, Sakai T. Dietary diversity and food choice motives during the COVID-19 pandemic among older Japanese: An Internet Panel Survey. Asia Pac J Clin Nutr. 2022;31(3):433-440. doi: 10.6133/apjcn.202209_31(3).0011.
- Nakamoto M, Kanmura M, Yoshida M, Tanaka Y, Ono S, Iwasaki Y, Nakamoto A, Sakai T. Validity of dietary diversity assessed using short-form questionnaire among older Japanese community dwellers. J Med Invest. 2022;69(1.2):31-37. doi: 10.2152/jmi.69.31.
- Nakamoto M, Otsuka R, Tange C, Nishita Y, Tomida M, Imai T, Sakai T, Ando F, Shimokata H. Intake of isoflavones reduces the risk of all-cause mortality in middle-aged Japanese. Eur J Clin Nutr. 2021 Dec;75(12):1781-1791. doi: 10.1038/s41430-021-00890-w.
研究概要
疫学研究とは、地域社会や特定のヒト集団を対象とし、病気の発症状況など健康に関連する事象の頻度などを調査し、その要因を明らかにする医学研究です。
我々は、高齢者を対象とした疫学調査を通じて、食と健康との関係について評価することに加え、食を選択する際にかかわる要因に関する検討や、個人の健康増進や、地域や職域、病院や在宅医療などにおける保健?栄養指導、栄養教育等にも活用可能な食事バランスのチェックシートを開発しました。
【地域在住中高年者における大豆製品摂取と全死亡リスクとの関連】
豆類から作られる大豆製品は、植物性たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素のほか、イソフラボンなどの栄養機能性成分を含んでいることから、健康に寄与することが期待されています。国立長寿医療研究センターで実施されている「国立長寿医療研究センター?老化に関する長期縦断疫学研究(National Institute for Longevity Sciences - Longitudinal Study of Aging : NILS-LSA)」に参加した40~79歳の中高年者2136名において、豆類や総大豆製品、総イソフラボンの摂取の多寡が全死亡リスクとどのような関連を示すのかを検討しました。その結果、60歳未満者において総大豆製品やイソフラボンの摂取は全死亡リスクを低下させる可能性があることを示し、総大豆製品の摂取量が最も多い群は最も少ない群と比較して、70%程度の総死亡リスクを低下させることが分かりました。この結果は、若い年代から豆腐や納豆、煮豆など多様な大豆食品を摂取するような食生活を目指すことが中高年期の健康状態に重要であることを示しています(図1)。
図1:NILS-LSA対象者における年代別の豆類摂取と全死亡との関連
【高齢者における新型コロナウイルス感染症拡大前後の食選択動機の変化】
オンライン調査に回答協力した60歳以上の高齢者400名の食事摂取状況や食選択時に優先する事柄(食選択動機)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大前後の変化を評価しました。日本ではCOVID-19拡大に伴う緊急事態宣言が発令されたものの、その行動規制は諸外国とくらべ緩やかなものでありましたが、9つある食選択動機(気分/感覚、品質の明示性、体重コントロール、健康管理、栄養バランス、調理の手軽さ、親和性、関係性の折り合い、経済性)のなかでも、健康管理と経済性のスコアが増加していました。この結果は、高齢者がCOVID-19拡大期間中に外出行動を自粛する中で、健康に配慮したり、食料品の買い出しの頻度を抑え、備蓄できるもの(食材確保の手軽さ)や簡単に調理ができること(調理の手軽さ)に重きを置いて、食材を選択するようになった可能性を示しています(図2)。
図2:COVID-19感染拡大前後の食選択動機スコア(健康管理、経済性)の変化
【食事バランスチェックシートの開発】
地域で生活できる健康な日本人を対象とし「何をどれくらい食べたらよいか」について栄養素ごとに基準を示したものを日本人の食事摂取基準といいます(厚生労働省)。健康を維持?増進させる上で「適切な量と質からなる食事」は欠かせない要素であり、地域で生活する高齢者にとって、より簡便に食事のバランスを評価できるツールは重要です。
そこで、徳島県の地域在住高齢者59名の2種類の食事データ(3日間の食事記録調査と食品群別摂取頻度調査)とNILS-LSAの第7次調査に参加した中高年者2145名の食事データ(3日間の食事記録調査)を用いて、日本人の食事摂取基準に設定される栄養素のうち主要な推奨される9つの栄養素(たんぱく質、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンC、食物繊維)の基準を満たすことを高得点とするスコア(食事バランススコア)とその評価表(食事バランスチェックシート)を開発しました(図3、4)。
この食事バランススコアに基づき作成された食事バランスチェックシートは「栄養バランスの良い食事をとれているか」を13品目で簡易にチェックし、「どのような食品を摂取するとバランスが良くなるか」を把握するために開発されています。個人の健康増進や、地域や職域、病院や在宅医療などにおける保健?栄養指導、栄養教育等にも活用可能な食事バランスのチェックシートを使用し、より簡便に日頃の食生活の見直し機会を提供することに期待しています。
図3:食事バランスチェックシートの開発に関する紹介サイト
図4:開発した食事バランスチェックシート
今後の展望(研究者からのコメント)
私はこれまで若年者から高齢者までの集団を対象とした様々な疫学研究に関わってきました。特に地域在住中高年者を対象に実施されているNILS-LSAでは、老化に関連した健康課題(認知機能低下や死亡)に対する食事の影響を評価することに貢献してきました。また、徳島県の地域在住高齢者の調査データとNILS-LSAの調査データより、地域在住高齢者が簡便に食事バランスを評価できるためのツール(食事バランスチェックシート)の開発にも取り組みました。現在は、中高年者の脳の加齢変化に焦点をあて、食事の影響を明らかにしようとしています。今後はこれらの知見に基づき、地域在住中高年者がより自立して健康的に生活を送るための食事についてエビデンスベースでの提案ができるように取り組んでいきたいです。
また、徳島大学で連携がすすめられている異分野融合「医工連携」研究として、理工学部とともにeye-tracking技術やAI技術を用いてヒトの複数の生体指標から食行動の要因を推測するという試みに挑戦しています。今後も、これまでに行ってきた疫学研究を継続するとともに新しい技術を活用したヒト試験などを併せて行うことで、「食」を科学的に検証していくことに貢献したいと考えています。
その他参考となる事項
◆今回ご紹介した研究のほかに地域在住中高年者を対象にした研究紹介ページ:すこやかな高齢期をめざして ~ワンポイントアドバイス~
https://www.ncgg.go.jp/ri/advice/index.html
◆「食事バランスチェックシート」紹介サイト
https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/ep/meal_checksheet.html