疯狂体育,疯狂体育app下载5年度徳島大学卒業式?修了式式辞
疯狂体育,疯狂体育app下载6年3月22日(金)
会場 アスティとくしま
徳島大学長
河村 保彦
本日、学士の学位を取得した6学部1,221名の卒業生、6研究科、440名の修士?博士前期課程修了生、並びに51名の博士?博士後期課程修了生の皆さんに徳島大学の教職員を代表して心からお祝い申し上げます。また、ご家族や関係者の皆さまにも心からの祝意とともに、長い日々を見守っていただきましたことに感謝申し上げます。併せて、日頃より多大なご支援をいただきましたご来賓各位、徳島大学全学同窓会「びざん会」並びに各学部同窓会の皆さまに深謝申し上げます。
さて、皆さんが徳島大学で過ごされた期間は、新型コロナウイルス禍に大きく影響されました。その発端となる4年前、学生の皆さんはキャンパスへの入構が停止され、オンライン授業が始まるとともに、外出時は常時マスクを着用した生活となり、サークル活動も休止、アルバイト先も業務や営業の停止により皆さんの収入も大幅に減少して、日々の生活に窮する厳しい状況に追い込まれました。その一方で、皆さんはかつてない頻度で情報通信技術を活用した学びを体験されました。毎回多くのレポートを提出しなければならず不満に思ったことや、友人との情報交換、教員との質疑応答に困難さを感じたことも少なからずあったかと思います。他方、オンデマンド型の授業では、講義を繰り返して聞き直し、理解を深めるといったメリットも享受できたのではないかと思います。社会ではテレワークが一気に普及し、働き方が大きく変わりました。昨年5月になってようやくこの新興感染症が5類となり、先の見えないトンネルの中から、ようやく明かりが見え始めました。この厳しい状況下で努力を重ね、最後まで諦めずに勉学に励んできた卒業生?修了生の皆さんに、敬意と称賛を表します。
このパンデミックに加えて、疯狂体育,疯狂体育app下载6年能登半島地震、世界各地の戦禍と紛争、そして主義?信条の異なる人々の間の深刻な軋轢など、今世紀も課題が山積しています。経済学者のアルフレッド?マーシャルは、1885年にケンブリッジ大学教授に就任する際、就任講演の締めくくりの言葉として、「ケンブリッジが世界に送り出す人物は、冷静な頭脳と温かい心を持って自分の周りの社会的苦悩に立ち向かうために、その全力の少なくとも一部を喜んで捧げよう」と語りました。この「冷静な頭脳と温かい心」(Cool Head but Warm Heart)という言葉は、今も経済学者のあるべき理想の姿と言われています。しかし、それは経済学に止まらず、社会のさまざまな課題を解決するあらゆる学問領域に共通する姿勢といえます。これから社会で活躍する皆さんは、冷静に分析する一方で人々の幸せな暮らし(Well-being)を実現することにも思いを巡らせていただきたい。そのために、ぜひ今後も「想像力」や「洞察力」を磨いてください。A I(人工知能)が卓越した「クールヘッド」であれば、「ウォームハート」は人の強みであり、その根幹に「想像力」や「洞察力」があります。ここでいう「想像力」は、ジャーナリストやニュース解説者として著名な池上彰さんによれば、『自分ではない「他者」、ここではない「場所」、いまではない「時」などに対して、自由に思いをめぐらせる力。そして、想像力は人々が行動する原動力になったり、道を切り開くキッカケとなったりする力』と定義されています。さらに「想像力」には距離を超え、同時代を生きる他者、身近な人から海外の人々まで水平展開される「横の想像力」と、過去?未来の世界や、未来の自分自身へと時系列で踏まえた想像力である「縦の想像力」があります。例えば、能登半島地震の被災者が避難所ではなく、幾日も車中泊したり、寒気にさらされながらビニールハウスの中で生活することを選択することにもそれぞれ理由があります。最適解に迫るには、それらの人々とコミュニケーションを十分とり、また今後の生活再建も視野に入れる「横の想像力」を働かせた最適解が求められます。縦の想像力を働かせ大望を実現しつつある人の例としては、MLBの大谷翔平選手やフィギュアスケートの羽生結弦さんがいらっしゃいます。彼らは少年時代に描いた夢―未来の自分に対して自由に思い巡らす力―すなわち「縦の想像力」―を発揮させ、一歩一歩夢を実現している人々です。もちろん、そんなトップアスリートとして世界に名を馳せる人はごく少数です。だからといって、自身の将来設計を放棄してしまうのは残念なことです。人は「将来こうありたい」という夢を堅持し続けると、完全にその通りではなくとも、どこか一部でも実現できていることがしばしばあります。どうか皆さんは、「縦と横の想像力」を鍛え、自らの人生を切り拓き、社会に貢献して下さい。そして、その途上さらに、学び直したいという場合も訪れるかと思います。徳島大学では門戸を広く開け、その時のために皆さんを迎え入れる準備が整っています。大学院での学びや「人と地域共創センター」で用意しているリカレント?リスキリングの研修コースを大いに活用して下さい。
次に、今まさに旬のテクノロジー「生成AI」について述べます。最近のニュースとしては、1989年に亡くなった漫画家の手塚治虫さんの代表作、「ブラックジャック」の新作が、AI技術を使うことで完成したというニュースが、昨年11月に発表されました。また、昨年末には、香川大学で空海の筆がAIで再現されたと報道されました。こうした作品は、作者のオリジナルなもので、その人にしか創ることのできないものと思っていました。これからの社会では、AIが飛躍的に進化し身近なところで人と共存していくに違いありません。そして、これまで人が担ってきた仕事をAIが取って代わり、職業構造も変わっていくと予想されます。そこで、将来に備えて皆さんに心がけていただきたい3点をお伝えします。
1つ目は主体的な学びを進めていただきたい。能力の高いAIも誤った回答をすることがあります。そのため、人間にはAIが作成した回答を自分なりの問題意識に基づいて判断する能力が必須で、正解として示された回答に安易に満足しないことが肝要です。2つ目に相手を批判するのではなく、「対話」と「傾聴」を通じて課題を解決する力を身につけていただきたい。これは先に述べた「横の想像力」を働かせることになります。今後、対話は人と人との間だけでなく、人とAIとの間でも不可欠なものになるでしょう。事実、すでにAIとのよりよい対話を目指して、「プロンプト?エンジニアリング(AIにどのような問いかけをするか考える)」が重要視されています。3つ目はさまざまな課題に対して多面的に考えてみる「柔軟性」を身につけ、活用することに積極的に取り組んでいただきたい。こうした取り組みを通じて、これからの時代に必要な能力やスキルを見極め、自分の知識や強みに磨きをかけていきましょう。
今日ここに集う皆さんは、徳島大学卒業生?修了生として、それぞれの分野で誇りを持って大いに活躍し、社会に貢献して下さい。しかし、失敗することも往々にしてあります。それも新たな気づき、学びとして厭わず大いに経験して下さい。私は、「成功する」ことだけではなく、「成長し続けること」が大切だと考えます。そこで、インドの民主化指導者マハトマ?ガンジーも用いた言葉を紹介します。それは、「永遠に生きるかのように学べ、明日死ぬかのように生きよ。」というものです。長く言い継がれているこの言葉は、将来予測の困難な「VUCAの時代」-すなわち「Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、 Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の時代」-だからこそ、心に響きます。
結びとなりますが、どうか常に夢を求めてチャレンジし、たとえ失敗してもまた立ち上がってください。そして、それぞれの立場で学び成長し続け、世の中に貢献されることを心から祈り、卒業?修了される皆さんへのエールの言葉とします。万感の思いを込めて、卒業?修了おめでとう。